ザゼンソウ再び

30日の日記にザゼンソウのことを書きました。http://sns.city.morioka.lg.jp/blog/blog.php?key=29361 でもこれ、相当酔っ払って帰ってきて書いたものでしたので、アバウトです。ということで、少し詳しいものを書きましたので、紹介します。(たぶん、前の日記のほうが読みやすいです) ーーーー  3月29日、今年最後の、岩手大学ミュージアムボランティアスキルアップ研修を行いました。 僕はボランティアさん担当なので、企画運営司会片付け連絡など、いろいろやりました。 ザゼンソウサトイモミズバショウ亜科に属する植物です。 植物なのに発熱する、ということで、文科省から数億円のお金をいただいて大規模?な研究が行われました。 そのザゼンソウに注目して、その作用機序などを研究している伊藤菊一先生に講師をお願いしました。無料奉仕です。。。しかも、今まさにザゼンソウ は発熱している時期なので、年に数週間の貴重な時期、申し訳なさ1000%です。 が、これを岩手大学ミュージアムに来館する人に説明するためということで、快く引き受けてくださいました。 さて、実は発熱する植物って、いくつかあるようで、あのハスも発熱するのだそうです。 ハスは夏に咲くので、匂い成分を揮発させて虫をおびき寄せるためではないかと言われています。 いっぽう、ザゼンソウは今、雪の中で発熱しています。寒冷環境で発熱するのはザゼンソウだけなのだそうで、これ自体は1970年代にアメリカで報 告があり。発熱する植物の存在は1778年にフランスの研究者が報告しているのだそうです。へーえ。。。杉田玄白が解体新書を出した頃です。 ザゼンソウは、スカンクキャベツと呼ばれ、相当臭い臭いを出しているそうで、先生は実物を持って来てくださいましたが、臭いはあまりしませんでし た。でも、毎日遠くの繁殖地まで足を運んで研究をしているようで、前日採って来たものを私たちのために供してくださいました。 日本語のザゼンソウは、座禅僧。まさに仏炎苞の中に肉穂花序がある様子が、座禅を組んでいる僧侶のように見えるのでしょう。 で、今のところ、分布は北米と日本だけ。少し中国や韓国にもあるらしいですが、まあ、生物の生息地は分類学者の生息地と同じ、と言われたりするの で、これからも発見があるのかもしれません。 ザゼンソウの発熱するのは、肉穂花序の中の、小花と呼ばれる部分だそうです。肉穂花序は、たくさんの花が集まった部分で、それは、周辺部の小花 と、中心部の?からできています。 そして、発熱は、気温の上下に関わりなく、5〜7日間、ほぼ一定の23℃に保たれます。この時期を雌期と呼び、めしべだけが出ている時期なのだそ うです。その次に両性期と呼ばれる半日から1日の時期があり、次が雄期で、ここになると、気温より少し高めですが、一応発熱しているものの、同じ温度に保 たれることはないそうです。 つまり、先にめしべが働き、あとでおしべが働く、雌性異熟の中の、雌性先熟タイプです。 これによって、自家受粉を避けているのではないかと言われています。 さて、この発熱の意義ですが、たとえば、冷害のときに米ができないのは、気温が低く、変温生物である米は、体温が下がるために生殖器が熟して来な い。でも、ザゼンソウは、それを自分で発熱することで避けている。つまり、生殖のために発熱しているという仮定が成り立ちます。 事実、ザゼンソウの体温である23℃で、花粉管が一番よく伸びるのだそうです。 つまり、ザゼンソウの花は、温かくして花粉が来るのを待っている。そこに来た花粉は、23℃であれば十分に花粉管を伸ばし、生殖が成立しやすくな る、ということです。まだおしべの中にある花粉が成熟するのには、熱が関係あるかどうかはわかりません。 で、この発熱は、何が元になっているのかというと、根から上がってくる糖だそうです。 この糖をエネルギー源にして発熱している、と。体内で糖をゆっくりと燃やしてエネルギーを得ているなんて、動物と同じですね。実際に、発熱時には 酸素を使って二酸化炭素を多く排出しているようです。 で、残る問題は、花粉を誰が運ぶのか、という問題です。 暖かくしていると、虫が来るのか?ということが考えられますが、現在、ザゼンソウが花を開く時期には虫はまだ出てきていません。だからこれは消さ れるのですが、昔はそうだったのかもしれない、なんて言ってました。つまり、わからない、ということですね。結局、風媒花ということですから、発熱の生物 学的意義は花粉管を伸ばしやすい環境を作っている、ということになるでしょうか。 で、このザゼンソウ発熱制御アルゴリズムを使って、省エネ型の温度制御装置が2月に発売されたのだそうです。これは、周囲の温度変化にもそんなに 左右されず、安定した温度制御ができるということで、10万円もしないそうです。今後いろんな分野で使われていくのかもしれません。