授業、楽しかったー(長文)

岩手大学は、全国で実施しているのは2割しかないと言われる、環境教育を全学生に必修にしている大学です。
日本の環境系学生団体が選ぶエコ大学ランキングでは,毎年、1位、2位、2位と、トップクラスを保持しています。

環境教育科目にはテーマごとに11種類あり、受講学年である1年生はどれでも選べます。
また、それぞれの授業は複数の学部の教員が担当しなければいけないことになっています。
私は「環境マネジメントと岩手大学」1回と、「動物と環境」2回を担当していますが、今日行った「動物と環境」は、農学部の獣医や生態学の先生たちと一緒に担当しています。

〜〜〜〜〜〜〜授業の様子〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

さて、今回は2回目の担当で、環境教育についてお話ししました。
前回のテーマは海の生物の環境保全と環境破壊で、種市町(現洋野町)のゴルフ場の建設反対訴訟に参加した経験や、生物の絶滅についてのお話をしました。

まず、前回の授業の振り返りを行いました。
毎回書いてもらっているレスポンスカードでわかったことですが、前回紹介したゴルフ場建設反対訴訟の舞台となった漁協にお勤めのお父さんを持つ学生がいました。
また、他の先生の授業で習った内容について僕に問うカードもありました。
そういうところから授業を始めます。

まずは「環境問題のジレンマ」から。
環境問題にはいろいろあります。そして必ず良い面と悪い面があります。
5つの環境に良い活動について簡単に紹介し、順位をつけて発表してもらいます。
・紙コップは使わない
・レジ袋はもらわない
など。
これは、5×4×3×2×1通り=120通りあるので、けっこうバラバラになります。
各学部から一人ずつ指名して、4人の学生に順番を教えてもらいますが、残りの学生に尋ねても、同じ順番になる人は2人くらいしかいません。

じゃあ、何からやるか、というときに決まらないじゃないか。

でも実は、それに順位を付けるという作業を、大人たちは議会でやっている。
それを実行する行政。
そして一般市民は今、NPOという組織を作って活動したり意見を言うことができる。
そして議員に働きかけて、議会で取り上げてもらう。
その議員を選ぶ選挙に、みなさんも20歳になれば、参加することになるのです。
自分の考えに一番近い人を選ぶと、自分が良いと思う世の中になるかもしれません。

そういうことを君たちは習って来たか?

たとえば、環境学習としてどんな教育を受けて来たか?
(たいていは、先生が話して終わり)
30歳以上の人は、あまり環境教育を受けていない。
それでは、優先順位を付けても行動につながるわけはないじゃないか。

では、僕の研究室でやっている環境教育の研究例を紹介する。
アメリカのプロジェクトワイルドなどを日本の学習指導要領に合わせて。
行動できる人を育成するところに目的がある環境学習プログラムである。
【例示】
「恐竜の足跡」
発掘現場で得た足跡から、その生物が生きていたときに何が起こったか考えて話し合う。似たものにニマルトラッキングがある。自然を大切にと言っても、自然を知らないのでは意味が無い。
「森の音を聞く」
10分間森の中で一人になり、自然とはどういうものか考え、人の感じ方を知る。
感性を磨く。
「みんなのトンボ池」
トンボを守るためにはどういう街作りをするか。さらに役割(役場の人、農場主、商店主、工場長など)を決めると、利害関係が見やすくなり、優先順位についても学べる。まさに今、津波被災地がやっていること。行政案が出て、それをみんなで検討し、最終的に議会で決め、行政が執行する。
「オー・ディア」→中学校3年生の生物ピラミッド、食物連鎖に関連。
※実際に、階段教室で、110人の学生から、最前列と最後列の学生に協力してもらった。
【方法】今回は、最初に13人の学生に、鹿役と森の要素役に分かれてもらう。鹿6人、森の要素7人から始めた。鹿は、森にある「水」「餌」「隠れ家」のどれが欲しいかポーズであらかじめ決めておく。が、お互いに離れて(教室の前と後ろ)背を向けて立つのでわからない。森の要素役もあらかじめその3つのどれか決めておく。が、やはり後ろを向いているのでわからない。合図で向き合い、森の要素の中から鹿は必要なものを選んで連れて来るが、森にそれが無いと死ぬ。選べれば連れて帰って来年は2頭になる)
結果、鹿の数は、6→10→6→12→と変化した。最後は森の要素の人(一人)には、教壇の陰に隠れてもらった。
これは、生息地から水も餌も隠れ家も無くなったということ。
12頭の鹿は全滅してしまった。(笑)
協力してくれた学生にはみんなでお礼の拍手!

ビデオを見る。「多様な生命の星で」20分。NHK教育「地球データマップ」から

大豆などの大規模単一作物のみを増やすために大地を壊して来た。
インドでは、「緑の革命」と言われたが、数年後、土は使えなくなった。
バンダナ・シヴァさん(女性科学者)は、1万年続いて来た地域の作物なら肥料も農薬もいらない。「水」「豊かな大地」「多様な生物」があれば、また1万年、私たちは持続可能な農業を続けて行けるのだ。と。

最後にESD。
持続可能な開発のための教育の10年。
(時間切れで急ぎました)
岡山の京山地区の活動紹介。
地域の環境を調べる活動を子どもも大人も一緒にやる。
その経験を、地域の校長や敬老クラブなど、多様な主体の集まる場で発表させ、質問もさせる。
そのことによって、国際会議でも、アジアの大学の先生が紹介する実例を理解することができ、質問や提案をすることができる小学生が育つ。
教育は、どういう人を育てるか。

岩手大学は、ESDの先進大学。
環境マネジメントシステムISO14001を全学で取得。
環境マネジメント学生委員会もある。(メンバー募集中)

ということで、授業アンケートとレスポンスカードを書いて提出。

〜〜〜〜〜〜授業の様子終わり〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

最後に、試験についての質問があり、答えました。
試験は、全員の先生が問題を出して、その中から複数選んで答えるというもの。

「先生も問題を出すのですか?」
と聞いて来た学生がいました。

もちろん出します。
でもこの質問、どう考えればいいでしょう。
今日の授業がよほど楽しかったのでしょうか。(笑)
ここで僕におべんちゃらを言っても意味はありません。(誰か知らないのだし)

なんだか、授業の途中で、学生たちがものすごく集中していたり、オー・ディアでは、全員が笑いながら、「次はこうなるぞ」みたいな顔をしていました。

今回は、僕にとってもとても楽しい授業になりました。
こういう授業が毎回できたらなあ。。。と思います。切実に。

ちなみに、担当授業は年間15〜20種類。(毎年変わります)
回数は1年で230コマ(1コマは90分)前後あります。。。
(同じ内容をやるのは8回だけです)

良い授業をしようと思えば、先生を増やし、一人当たりの担当回数を減らし、授業準備にかける時間を確保することも必要だと思います。(が、定員削減で・・・)