海と漁民と防潮堤
『現代思想』3月号を楽しみにしていた。
特集は「大震災700日」。
この中に、宮城県南三陸町歌津(伊里前(いさとまえ))の漁師、千葉拓さんの「海と漁民と防潮堤ー故郷のゆるぎない魅力と誇りを次世代へー」という文章がある。
スキューバで潜る彼が海底を確認し、祖父が話していた50年前の豊かな砂地を見て、「津波は奪い、そして与えてくれたのだ」と感慨を述べていることに感動を覚える。
それは、そのあとに続く、スーパー防潮堤が伊里前湾の恵みを破壊するであろう姿と対置されている。
私たち日本に暮らす者たちは、多様な自然の恵みと、たびたび起こる河川の氾濫や崖崩れ、そして津波などによる撹乱によって1から出直す自然に守られつつその生活を維持してきた。
津波によって1から出なおそうとする自然とそこで生きる者たちに、スーパー防潮堤は何をするのか。
景気浮揚策としての土木工事だとしても、もっと多角的に物事を考えるのが国の務めなのではなかろうか。