ウイルス雑感(発熱センター電話番号付き)

新型ウイルスが流行っています。
ものすごい感染力だそうです。

とりあえず、盛岡での発熱センターの電話番号を書いておきます。急激に発熱したら、電話して指導を仰いでください。

盛岡市保健所   019−603−8308
岩手県県央保健所 019−629−6573


僕(もしかしたら、少しだけ詳しいかもしれません)から見ると、今の騒ぎはいったい何なのだろうなあ、と思います。
ちょっと専門用語をできるだけ入れないで(義務教育レベルで)書いてみます。(不正確さは残りますが)

ウイルスは、基本的には細菌類などの生物とは異なり、物質と考えてください。(というところですでに難しいか)
ただこの物質は、タンパク質と核酸(DNAなど)でできており、ときどき性質を変えます。これは、遺伝子の変化により引き起こされます。

この物質は、人間なら人間の特定の細胞(肺の細胞とか気管支の細胞とか)にくっつく性質を持っています。この性質が変わると、予想しない症状が起こりますが、ウイルスにとってもここを変えることは自分の存続に関わりますから、下手をすると生きていけません。当然この変化は、人間側も予測できません。
(だから、細胞が違う鳥から人間には直接はうつりにくいのです。同時に、鳥インフルエンザが人間に効いたということは、ここが変わったということです。が、人間のどこに効いてくるかも変わります。豚は人間に近い動物なので、比較的小さな変更で人間にも感染するようになるのでしょう。逆を言えば、豚で実験できる、ということでもありますし、もしかしたら豚でワクチンが作れるかも)

で、ウイルスは自分で増えることができません。つまり、生物が行っているような、栄養を取って自分の体を作ったりエネルギーを作ったりはしません。どうするかというと、特定の細胞に取り付いて、細胞内に自分の遺伝子を注入するのです。注入された遺伝子は細胞のDNAなどと結合してしまうので、細胞は自分のためにタンパク質を作るついでにウイルスのタンパク質も作ってしまいます。ついでにDNAなども複製してしまいます。
これによって、ウイルスは、自分が取り付いた細胞が持っている材料とタンパク質生成機構で、自分と同じものをどんどん作ってもらっているのです。やがて細胞内がウイルスでいっぱいになると、細胞が壊れます。その結果、細胞が働かなくなった私たちの体は異常な症状を引き起こすことになります。当然、そこに別のばい菌が侵入して肺炎などを引き起こすこともあります。ばい菌がいない人や、体力のある人は、症状が低いうちに治まったりします。

なので、実は、ウイルスが入ってきて症状が出るまでには、かなりの数の細胞がやられなければならず、時間がかかります。これを潜伏期と呼んでいます。
だから、ウイルスによって引き起こされた症状が出たときには、だいたいその症状で、ウイルスが入って何日目か、ということがわかります。ついでに言うと、その時期にはすでに薬は効かないと考えたほうが良い時期もあります。

薬が効かないのなら治らないのか、というと、そうではありません。ウイルスで引き起こされるたいていのインフルエンザは1週間で治ります。
私たちの体には、免疫という、異物を認識して排除する仕組みが備わっています。ウイルスもその対象になります。

まず、細胞レベルでは、ウイルスにやられた細胞が自ら死ぬことでウイルスの増殖を抑えることができます。つまり、細胞が死ぬことでウイルスは増えることができなくなってしまうのです。

次に、ウイルスだけを認識して取り込んでしまう細胞が体内に新しくできています。これは、肝臓で分解されて体外に出されてしまいます。これが起こるには、ウイルスの認識機構と、新しく生まれる細胞の増加が必要なので、少し時間がかかります。
が、すでにこの免疫ができている人は、ウイルスが入ってきてすぐにウイルスを認識することができるので、早いうちにウイルスを排除することができ、症状が出る前に戦いに勝ってしまうのです。

今回、若者に広がる特徴を持っているのは、もしかしたら壮年や老人には免疫を持っている人が多いからなのではないか、と考えられます。新型と言われていますが、免疫が効く場所(ウイルスのどこか一部です)の構造が同じものが過去に流行ったのかもしれません。

なので、ウイルスに初めて感染した場合、症状によってはすでに進んでいて薬よりも自然治癒が有効なレベルになっていることもあります。そんなことを言うと薬屋さんが怒るのであまり書けませんが。

症状で見ると、普通の風邪は、喉の痛みや鼻水で始まり、その後に徐々に熱があがる感じですが、ウイルスの場合は、いきなり熱が上がります。それが見分けるための特徴です。たいていの抗生物質は細菌類の細胞壁を壊すので、ウイルスには効きません。二次的に細菌類が症状を起こしているのなら、それには効きますが。

今回の新型ウイルスは、発熱症状(細胞が戦い始めたことを意味します)が出るまで(潜伏期)に1〜2日かかるといわれています。このときなら少しは効きますから、抗ウイルス薬をもらい自宅にこもって外に出ず、自分からの感染を防ぎます。当然家族とも隔離することが望ましいです。まあ、1週間で治まります。劇症の人(二次感染や別の病気を持っている人)は、入院できますが、普通は下痢が追加されるくらいですので、水分をたくさん取ることも必要になるでしょうね。

それから、ウイルスは乾燥には強く、感染した人の体から出ても、唾が飛んだ場所に触れた手で次の場所に運ばれることもあります。なので、手洗いが必要です。もちろん、唾から出て他の人の呼吸時に喉から感染しますから、うがいも必要です。
そういう条件はどこにあるでしょう。
エアコンです。エアコンが効いた部屋に感染者がいると、まあ、ほとんどうつってしまうでしょうね。
うちみたいに、洗濯物が部屋の中にぶら下がっている家では、ウイルスは水蒸気にくっついて下に落ちてしまうこともあります。もちろん、我が家にはウイルスがくっつきそうなゴミもいっぱいです。(冗談)

湿度と高温。
ウイルスはこれではあまりうつりません。
だから、湿度が低く、温度も低い季節性のウイルスが存在するわけです。

あとは悪性ウイルスにいつ変化するか、と、今年の秋冬に大発生するのではないか、ということが懸念されます。

また、今回の措置は、大騒ぎしすぎですが、これが悪性のウイルス対策の予行演習だと考えると、やっと合点がいきます。少なくとも、今の段階では、そんなに怖いウイルスではないと思います。が、これから冬を迎える南半球に行く人はご用心、というところでしょうか。

とにかく手洗いとうがいです。マスクは、まあ、よほどきっちりとしないとあまり意味がありません。マスクに触った手であちこち触るようでは、意味がありませんよね。また、鼻のところが空いていても意味がありません。きちんと着用し、マスクに触ったらすぐに手を洗う。がんばってください。

ぎゃー、出勤時間です。
僕は車で出勤し、授業以外は研究室から出ません。
ではでは。

書き残したことがあると思いますので、質問はどうぞ。